AIの演算を支える高性能サーバーで中小・中堅企業の成長を支援
日々、目覚ましい進化を続けるAI技術。その基盤を支えるのが高速な演算処理を可能にするGPUサーバーだ。ブロックバリューは独自開発の高性能なGPUサーバーで、AIの活用で出遅れが目立つ日本の中小・中堅企業の持続的成長を支援する。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)
国外のITインフラに依存 日本のIT市場に危機感
ブロックバリューは2022年に設立されたばかりのスタートアップ。代表取締役で総合商社出身の大西基文氏のキャリアはユニークだ。
「商社が得意とする間接販売と共に、メーカーによる直接販売の時代が来ると確信し、1997年に伊藤忠商事を退職してパソコン直販のデルコンピューターにジョインしました」
デルではオンラインストアによる直販体制を拡充。その後はアスクルやアマゾンジャパンの立ち上げフェーズにも携わり、セキュリティソフトウェアベンダーの個人投資家兼社長を経て、バイスプレジデントとしてトレンドマイクロに入社。さらにクロックスジャパンでも代表を担い直営店舗を拡大する。ジョンソン・エンド・ジョンソンではコンタクトレンズ部門の営業責任者として流通の強化に加え、オンライン・リアル店舗の直営体制を整備した。多彩なキャリアを持つ大西氏がブロックバリューへ参画するきっかけとなったのは新型コロナウイルスの罹患だった。
「一度立ち止まって考える時間ができました。その中で、これからの30年を展望する上で欠かせない分野を『AI』『仮想現実』『ブロックチェーン』の3つに絞りました。この3つの理解を深めるために米国マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学バークレー校の専門講座で学び直しました」
そこで大西氏が実感したのがこれらの技術を支える高性能サーバーの必要性。それと同時に受講者に日本人が大西氏を含め1~2人という現実から、日本の立ち遅れにも危機感を感じたという。
「世界のクラウドコンピューティング市場は100兆円規模と言われ、今や電気やガスと同じ産業を支えるインフラですが、日本は2兆円程度。世界で高性能サーバーによるデータ処理がITインフラとして整備が進む中で、国外に依存せず日本発・日本国内でのインフラ整備を進めることは、新しいビジネスや技術、そして雇用創出の環境が整い、日本の持続的成長につながるはずです」
その思いから大西氏は、GPUサーバーの製造・販売を行うブロックバリューに参画。2023年に石川県の志賀原発近くの工業団地にある日立製作所の精密機械工場を居抜きで取得し、信頼性、可用性、保守性に優れた独自開発のGPUサーバー「Win Supreme G11」の国内製造を開始した。
十分な電力を賄える受電設備を備え、精密機械の製造に必要な高い堅牢性も兼ね備える同工場は、データセンターとしても最適な条件が整っている。この設備と同社のGPUサーバーの性能の両方を生かす形で、現在、パートナー企業によって同社のGPUサーバーが稼働するAIデータセンターが運営されている。同社はメーカーの枠を超え、パートナー企業と共に日本のITインフラの整備にも動き出している。